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ほくとと

所沢で地域活動をしている方々の
インタビューをご紹介します。

  • ほくとと インタビュー

公益社団法人 所沢市シルバー人材センター 理事|佐藤 重松さん

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ほくとと インタビュー #24

定年を迎えても「まだまだ働きたい」「社会とのつながりを持ち続けたい」という方は少なくありません。しかし、長く会社勤めをしていた人にとって、あらためて地域とのつながりを持ち、自身の存在価値を見出していくのは意外と難しいもの。そんな中、地域高齢者がいつまでも元気に毎日を過ごせるよう、フレイル予防の啓発に長きに渡って取り組んでいる佐藤さんに、活動を始めたきっかけや地域高齢者に対する想いを詳しく伺いました。

佐藤 重松(さとう しげまつ)さん

1946年、岩手県奥州市生まれ。青年時代(20~40代)は労働組合や住民運動など組織や地域のための活動に参画。65歳で定年退職後、シルバー人材センターに登録し、セカンドキャリアをスタートさせる。その後、所沢市高齢者大学や所沢市民大学にて地域社会全般を学び、中でも地域福祉活動へ関心を抱く。地域福祉サポーターとしての活動もスタートさせ、現在はシルバー人材センターの理事に就きながら、松井地区を中心にフレイル予防の普及に尽力。今後さらに所沢市内11地区への普及拡大を目指し、高齢者がいつまでも元気に働ける心身の健康づくりをサポートしている。

  • 佐藤重松様
妻の後押しからスタートしたセカンドキャリア

――地域活動を始めたきっかけを教えてください。

会社員時代は忙しくしていたので、65歳で定年を迎えるのをきっかけに、当初はしばらくゆっくりしようと考えていました。ところが、退職した翌日に妻が「これから何をしたいの?」と聞くんです。「しばらくぼんやりしたいかな」と答えると、妻はどうやら計画性のない私の第二の人生に危機感を覚えたようで、高齢期を迎えた人が活動できる場の情報を入手してきては、私に話してくれました。自宅で毎日ゴロゴロされても邪魔だと思ったのかもしれません(笑)。

そこで最初に足を運んだのが、シルバー人材センターでした。ひとまず登録してみると、自動車メーカーで新車や中古車を洗車する仕事を紹介してくれました。またそれ以外にも、定年退職者がこれからの生活を考えるための講座(保健センター主催)を受講したり、市が開講している高齢者大学や市民大学に通ったりと、行動の幅を広げていきました。

――高齢者大学や市民大学へ通おうと思った理由はなんですか?

埼玉県から東京都内に通勤する人を指す言葉として「埼玉都民」というものがあります。私はまさにそれで、会社員をしている頃は所沢市に住みながら地元のことをほとんど知りませんでした。そこで、あらためて住まいのある地域のことを知りたいと思い、市が運営している高齢者大学へ通ったというわけです。そこでは当時、同世代が160名ほど集まっていて、1年を通してさまざまなグループワークをおこなっていました。

その後、地域コミュニティづくりの担い手を育てることを目的とした市民大学というものがあると知って、そこで2年間学びました。2年間の学習過程終了後は、次期市民大学の受講プログラムを作成する企画委員に入り、企画委員長として講師選定にあたっての交渉などを担当しました。そうした活動の中で、とりわけ興味を抱いたのが地域福祉というジャンルです。高齢者の身としては無関係とは言えないものなので、まずは勉強してみようかとグループワークに参加してみたことが、その後の活動の原点になっています。

――地域福祉サポーターとしても活躍されていますね。

私はいずれ体が動かなくなり、自由のきかない生活を送る時がやってくると思って今を生きています。それを考えると、体が動くうちに社会に役立つことをしておかなくてはと思い、所沢市社会福祉協議会が主催している地域福祉サポーター※の養成講座を受講しました。今では年に2回、養成講座で受講者へ地域サポーターになることの意義を体験的に伝え、一緒にやりましょうと呼びかける立場にもなりました。

※地域福祉サポーター…街頭募金活動や生活困窮者への食品配布等、地域の問題解決をサポートする人

――「ふくし掲示板」を自宅の前に設置したきっかけはなんだったのでしょうか?

「今やれることはなんでもやる」が私の信条です。そこで、地域の高齢者の方々にフレイル予防などの有益な情報を提供するために、地域福祉サポーターの活動目標に掲げたのが「町に掲示板を増やそう」でした。ただ、課題もあって、私の自宅前の掲示板は定期的に情報を更新していますが、場所によっては貼り出された情報が古いままだったり、掲示板が雨ざらしになって劣化したりしています。そうした問題は議論をして、各地区の地域福祉サポーターが定期的に見廻りをするなど、改善に向けた取り組みも今やれる範囲でおこなっています。

  • ふくし掲示板▲佐藤さんのご自宅前に設置した「ふくし掲示板」

また、一時的に車いすが必要になった近隣の方のために、社会福祉協議会と連携して、自宅を車いすの貸し出しスポット(車いすステーション)として開放しています。近隣地域の中でも個人宅で車いすの貸し出しをおこなっているのは私の家だけなのですが、利用者はかなりいて、それなりに役立っていることを実感しています。公民館などの車いすステーションでは土日や祝日、盆や正月の貸し出しはおこなっていないこともあって、休日利用されたい方たちが比較的多く来てくれているように思います。

――地域福祉サポーターとして、フレイル予防に力を入れている理由を教えてください。

高齢者のことをよくわかっている高齢者自身が、高齢者問題に挑むことは非常に大事なことだと思っています。年々さらに高齢になっていく中で、自分が置かれている状況について身をもって理解できている人たちが問題に携わることは絶対に必要です。そこで私が定期的に開催しているのが「ところざわフレイル予防実践教室」です。これは高齢者が虚弱を予防するための教室で、ありがたいことにこれまでの参加者は累計で3,500人を超えるまでになりました。今の目標は、このフレイル予防の啓蒙活動をより多くの地域に広めることです。

今現在、所沢市全体としては高齢化率が約27%になっています。市民が34万人いる中、10万人を超える人が65歳を過ぎていることになるのです。しかし、高齢者と一括りにされている世代の中にはまだまだ活力がある人たちが多数います。そうした人たちが地域貢献として何かを始められるきっかけをつくることが今の地域社会で必要なことだと考えています。

  • フレイル予防体験講習会▲佐藤さんが開催するフレイル予防体験講習会の参加者

――フレイル予防で一番大切なことはなんですか?

筋力を維持していくには、準備体操や筋力運動などを週一回おこなうだけではなく、日常生活の中で運動を取り入れることも大事です。例えば、家でテレビを見ているときにかかとを上げる運動を繰り返すと、ふくらはぎが鍛えられます。また、つま先を上げる運動を続ければ、今度は脛の筋肉が鍛えられるのです。それだけでつまずきにくくなりますし、歩くのが楽になる。

そして、運動と同じく大切なのが食です。高齢になるとつい粗食になりがちですが、本来は栄養のバランスが大事で、とりわけタンパク質をしっかりと摂取することが筋肉を維持するのには必要不可欠です。そして、何よりも大切なのは孤立しないこと。人との関わり合いを持ち続け、社会に参加し、交流することもフレイル予防につながると普段から強く訴えています。

  • フレイル予防体操▲フレイル予防体験講習会の様子
堂々と人様のお世話になるためにも、事前の地域貢献が大切

――シルバー人材センターの理事としては、どのような活動をされていますか?

シルバー人材センターの主な役割は、高齢者の就業対策なんですね。会社を退職した高齢者の働き場所を確保しようという国の取り組みでもあるのですが、一般の民間企業が果たしてシルバー人材センターの高齢者に期待する仕事は何なのか?それは非常に難しい問題です。老いていく高齢者に対して現役時代に培ったスキルを生かすような仕事はなかなか回ってこないのが実情です。実際に、高齢者に望まれる仕事というのは、いわゆる掃除だとか駐輪場の整備、あるいはスーパーマーケットのカート運びや工場のダンボールの組み立てなど補助作業になります。

ただ、物は考えようで、たとえ掃除であってもさまざまなやり方があって、工夫の仕方があるわけですね。私が初めてシルバー人材センターで紹介された洗車の仕事だって、始めたばかりの頃は3時間かけて15台をこなすのがやっとでした。これを7年ほど続けたのですが、その期間はどうすればこなせる台数を増やすことができるかを考え続けていました。最初はフロントから洗い始めたものを、サイドや屋根から洗ってみたりと、いろいろ工夫して、最終的には同じ時間で30台以上をこなせるようになりました。

こうなると、いただける賃金が安い、高いではなく、自身の成長に喜びを感じられる仕事になるんです。さらに、屈んだり、手を伸ばしたりといったことが良い運動になって、フレイル予防にもなる。そう考えたら、仕事に求めるものがまったく違う視点で捉えられるようになるはずです。自分が健康的になってお金ももらえるんだったら、こんなに良い仕事はない。そう思えるのではないでしょうか。それを同じ世代の人たちに理解してもらえるよう広く伝えていくのも私の仕事だと思っています。

また、シルバー人材センターは助成金で成り立っている公益団体です。つまり、高齢者の方々に紹介している仕事は、行政の予算があってこそ。それを考えると、財政が厳しくなる中で、ただ仕事が回ってくるのを待っているわけにはいきません。団体として、官民問わずこちらから仕事を獲得しにいくことも重要な課題と言えます。高齢者が活躍できることを行政や民間企業へアピールしていくことも大切な仕事だと考えています。

  • シルバー人材センター▲フレイル予防の促進パンフレット

――高齢者が活躍できる場はまだまだありそうですか?

近年はAI技術が進んでいますが、一方でやはりマンパワーが必要な場面は必ずあります。この間、とあるファストフード店に入ったら、高齢の女性が働いていて、とても元気にはつらつと接客していたんです。その姿、振る舞いがとても素敵で、本当に格好よかった。その様子を見て、これこそシルバーのあるべき姿であり、学ぶべきところだと感じました。与えられた仕事にああだこうだと言うのではなく、むしろ新しい体験ができると前向きに捉えるべきです。それを啓蒙していくことも私の使命だと思っています。

――よりよく生きていくためのヒントはありますか?

私はどうせ一度きりの人生なら、納得できる生き方をすべきだと思っています。そして、できればその延長線上として、人や社会に役立つ努力をしたいと思っています。いわば人生の最終章とも言うべき年代にあって、誰もがどういう最期を迎えるかはわかりません。突然倒れたり、あるいは長患いしたり、さまざまなことがあるけれど、今私が地域の皆さんに伝えているのは、「できるときに、できることを、できるだけやろう」ということ。

そうして人や地域の役に立ち、徳というポイントを積むことで、自身がいざとなった時は、堂々と人様のお世話になろうよ、と。そのためにも、元気なうちに自分のできる範囲で地域貢献をしておく。それがよりよく生きるための秘訣だと私は考えています。

  • 佐藤重松様

 

-インタビューを終えて-

介護や看護はする側、される側の違いはあれど誰もが通る問題と言えます。個人での事前準備や日々の介護予防はとても重要なものではありますが、地域の課題として捉えることの必要性を佐藤さんから教わったような気がします。

特に、自分もいつかは誰かの世話になることを考え、まずは自ら地域貢献に尽力すべきという考え方はとてもうなずけるものでした。そうした献身性こそ、これからますます高齢化を迎える日本の地方都市にとって、なくてはならないものであり、我が国の美しい文化である「お互い様」「助け合い」のあるべき形なのだと思います。

佐藤さんの活動は、高齢者だけでなく、その家族や地域住民にとっても役立っていて、ふくし掲示板や車いすステーションはまさに「自分にもできる地域貢献」の一つでしょう。

北斗不動産グループも地域高齢者や障がいを抱える方への支援活動として、所沢市社会福祉協議会が運営する「車いすステーション」に登録しています。所沢市の企業として、これからも佐藤さんの「できるときに、できることを、できるだけやろう」の精神を見習い、邁進してまいります。

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